KO NAKAHIRA - THE WILD CHILD OF THE SIXTIES

中平康 ー　60年代の野生児

「スカートの裂ける音、海を切り裂くモーターボートの音に、日本映画の新時代の開幕を告げる声を聞いた。」 これは中平康のスキャンダラスな成功作である、2作目『狂った果実』（1956）を評した、故・大島渚監督の有名な言葉です。中平の映画は、他のスタジオ映画をかすめてしまうほどに、スピード感と実験熱に溢れていました。中平康（1926-78）は、映画の魔術師と言われる鈴木清順とともに、千人を超える応募者の中から松竹へ採用されました。しかしその後、一刻も早く監督として活動するため、ライバル会社である日活へ移籍しました。特に60年代の彼の作品は、実験心に満ちた、激情や遊び心のあやであり、この「モダン」な感覚は、大島だけでなく欧米の監督をも魅了し、「日本のニューウェーブ」と評されるに至りました。60年代にスタジオシステムが崩壊したとき、中平は香港で撮影を行ったり、日本のインディペンデント制作へ移行しました。中平は1978年に若くして亡くなりましたが、生涯、実験意欲が失われることはなく、日本の映画界に偉大な傑作の数々を残しました。

ジュリアン・ロス（英リーズ大学）によるいくつかの作品紹介と、アレクサンダー・ツァールテン（米ハーバード大学）による講演『日本映画の死、日本からの映画の誕生。60年代から今日まで』（84ページ参照）が予定されています。

協賛: ケルン日本文化会館、国際交流基金

作品（抜粋）

1956 『狙われた男』、『牛乳屋フランキー』、『夏の嵐』 / 1957 『殺したのは誰だ』、『美徳のよろめき』 / 1958 『四季の愛欲』 / 1959 『紅の翼』、『その壁を砕け』、『密会』 / 1960 『地図のない町』 / 1961 『アラブの嵐』、『あいつと私』 / 1962 『危ないことなら銭になる』 / 1963 『泥だらけの純情』、『現代っ子』、 『光る海』 / 1964 『猟人日記』、『砂の上の植物群』、『月曜日のユカ』、『おんなの渦と渕と流れ』 / 1965 『黒い賭博師』 / 1966 『黒い賭博師　悪魔の左手』 / 1967 『特警009』 / 1968 『狂恋詩』 / 1969 『猟人』 / 1971 『闇の中の魑魅魍魎』 / 1972 『混血児リカ』 / 1973 『混血児リカ　ひとりさすらいゆく旅』